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第7回日本オープンイノベーション大賞で内閣総理大臣賞を受賞した、変形型月面ロボット「SORA-Q(LEV-2)」の共同開発プロジェクト。

異業種の技術を宇宙開発にどのように取り込み、月面で機能するロボットへとつなげたのでしょうか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の平野大地氏に、プロジェクトの経緯や開発の舞台裏、受賞の意義について伺いました。

平野 大地(ひらの だいち)

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JAXA宇宙探査イノベーションハブ主任研究開発員。長野県出身。ドイツ航空宇宙センター(DLR)での勤務を経てJAXAに入構し、宇宙ロボットの研究開発に従事。小型月着陸実証機(SLIM)ミッションでは、変形型月面ロボット「LEV-2(愛称 : SORA-Q)」の開発主担当として、プロジェクト管理などを担った。

SORA-Q(ソラキュー)

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SORA-Q(ソラキュー)は、正式名称を「Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)」とする超小型の変形型月面ロボット。

球体の状態で「SLIM」に搭載され、月面へ到達した後、自動で走行形態へと変形する。

JAXA、株式会社タカラトミー、ソニーグループ株式会社、同志社大学が共同開発した。玩具開発で培われた小型化・変形技術に、制御・センシング技術やJAXAの宇宙技術に関する知見を組み合わせて生まれた。2024年1月には、月面を移動しながらSLIMとその周辺を撮影し、取得した画像データを超小型月面探査ローバ(LEV-1)を介して地上へ送信することに成功。

1. おもちゃの技術を宇宙へ。SORA-Qプロジェクトはどう始まったのか

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SORA-Qプロジェクトは、JAXAの宇宙探査イノベーションハブに寄せられた研究提案をきっかけに始まりました。まずは、平野氏のこれまでの経歴と、プロジェクトの起点となった宇宙探査イノベーションハブの役割について伺いました。

- まず、これまでのご経歴と、JAXAで携わってきた研究開発について教えてください。

大学時代に宇宙ロボットの研究室に入り、それ以来、宇宙ロボットを専門にしてきました。大学卒業後も宇宙ロボットに関する研究を続け、その後、JAXAに入りました。

JAXAでは、研究開発部門や宇宙探査イノベーションハブで、宇宙ロボットに関する研究開発に携わってきました。

今回ご紹介する月面探査ロボットのほか、国際宇宙ステーションで使用されているカメラロボット「Int-Ball2」の開発も担当しました。現在は、スペースデブリを捕獲するロボットアームの研究開発にも携わっています。

- 宇宙探査イノベーションハブは、どのような役割を担っている組織なのでしょうか?

宇宙探査イノベーションハブは、非宇宙産業の企業と連携し、これまで宇宙分野になかった技術を取り入れることで、宇宙の課題を解決していく組織です。同時に、研究開発で得られた成果を、地上の課題解決やビジネスにもつなげることを目指しています。

宇宙探査イノベーションハブでは、企業や研究機関からRFP(研究提案募集)という形で研究提案を募っています。寄せられた提案をJAXA側で評価し、面白いものや価値が高いと判断したテーマを採択します。採択後は、資金だけでなく、JAXAの施設や職員が持つ知識も活用しながら、共同で研究開発を進めていきます。

- 今回のSORA-Qプロジェクトは、どのような経緯で始まったのでしょうか?

きっかけは、タカラトミーから研究提案をいただいたことです。

当時、私はまだ宇宙探査イノベーションハブに所属しておらず、JAXAの前任者が担当していました。

おもちゃの技術を宇宙ロボットに取り入れるという発想は非常に珍しいものであり、「玩具開発で培われた小型化や変形の技術を宇宙に応用することで、これまでにないロボットを生み出せるのではないか」という着想を評価し提案を採択したと、前任者から聞いています。

- おもちゃの技術を宇宙ロボットに使うと初めて聞いたとき、どのように感じましたか?

とてもユニークな発想だと感じました。これまでにも宇宙ロボットは数多くありましたが、おもちゃの技術を積極的に取り入れるという考え方は、あまりなかったからです。

私がプロジェクトに加わった時点では、まだ試作機の段階で、サイズも大きい状態でした。そこから宇宙で使えるものに仕上げていく必要があり、その部分で自分の専門性を生かしていかなければならないと考えました。

- プロジェクトは、その後どのような体制で進められたのでしょうか?

当初は、JAXAとタカラトミーによる共同研究から始まりました。

そこで一定の成果が見えてきたため、次は実際に宇宙で使えるロボットへ発展させよう、という流れになりました。

ただ、その段階になると、両者だけでは補いきれない技術も出てきます。そこでソニーグループが参画し、さらにタカラトミー在籍時からプロジェクトに携わっていた渡辺公貴先生が同志社大学へ移ったことから、同志社大学も加わる形となり、それぞれの強みを持ち寄る体制へと広げていきました。

- その中で、JAXAはどのような役割を担ったのでしょうか?

最初から細かく担当を割り振ったというよりは、それぞれが持つ強みを確認しながら、議論の中で役割や責任範囲を整理していきました。

JAXAが担ったのは、宇宙で実際に使えるものへ仕上げていくための技術的な支援と、プロジェクト全体のマネジメントです。

タカラトミーには、おもちゃづくりで培ってきたメカニズムや発想がありますが、一方で、それをそのまま宇宙へ持っていけるわけではありません。打ち上げ時の振動や宇宙環境に耐えられるか、探査機に搭載できる大きさや重さに収まるかといった点は、JAXAの知見を加えながら検討していきました。

また、最終的には小型月着陸実証機「SLIM」に搭載する必要があったため、その開発スケジュールに合わせた進行管理もJAXAが中心となって担っています。

- プロジェクトは、どのくらいの人数で進めていたのでしょうか?

中心となったメンバーは7〜8人ほどですので、プロジェクトの規模としては、それほど大きくなかったと思います。

ただし、その全員がこのプロジェクトだけを担当していたわけではなく、それぞれ別の業務と並行しながら関わっていました。

2.「宇宙開発ではこうしない」を言わない。異業種連携を進めるためのコミュニケーション

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異なる分野の知見を持ち寄るからこそ、新しい発想が生まれます。一方で、組織ごとに文化や仕事の進め方、技術を評価する視点は異なります。

そうした違いをどのように受け止め、プロジェクトを前へ進めたのでしょうか。

- 異なる組織のメンバーとプロジェクトを進めるうえで、どのようなことを大切にしていたのでしょうか?

特に大切にしていたのは、コミュニケーションです。異なる組織から集まっているので、当然ながら、文化も仕事の進め方もそれぞれ違います。「まずは相手の考え方や進め方を尊重する」という姿勢は、常に意識していました。

なかでも気をつけていたのが、最初から「宇宙開発ではこうしません」「その方法は難しいです」と言いすぎないことです。制約を先に並べてしまうと、自由に意見を出しにくくなります。まずは幅広くアイデアを出していただき、その後で、宇宙で実現できるかを一緒に考えていきます。

そうした順番で進めるようにしていました。

- 「宇宙開発ではこうしない」と最初から制約を設けなかったことで、どのようなアイデアが生まれましたか?

象徴的なのは、車輪が偏心しながら回転する仕組みです。

JAXA側では、力学的な挙動や砂との相互作用を踏まえて検討するため、こうした複雑な動きをする車輪はなかなか最初の候補には上がりません。

そうすると、発想の段階で選択肢を狭めてしまうこともあります。

一方、タカラトミーから出てきたのは、車輪そのものを偏心回転させながら動かすというアイデアでした。

通常のように車輪の中心を軸に回転させるだけでは、砂の中に沈み込み、うまく前へ進めないことがあります。そこで、回転軸を中心からずらした偏心回転機構を取り入れた結果、砂の中に埋もれにくく、前進できるようになりました。

これはJAXAだけでは出せなかった発想だと思います。異なる分野の発想を取り入れたことが、課題の解決につながりました。

- 異業種で連携する中で、特に難しかったのはどのような点でしょうか?

特に難しさを感じたのは、提案を評価する基準が組織によって異なることです。同じアイデアを見ても、どこに面白さを感じ、何をリスクと捉えるかはそれぞれ違います。

たとえば、タカラトミー側では、作りやすさや壊れにくさも重要な判断軸になります。一方、JAXA側では、宇宙環境で本当に使えるのか、十分な信頼性を確保できるのかといった点が判断軸になります。

そのため、提案を受けた際にJAXA側が考え込んでいると、相手には「前向きに受け止めてもらえていない」と見えることもありました。実際には否定しているわけではなく、宇宙で実現するための条件を頭の中で整理しているのですが、その意図は言葉にしなければ伝わりません。

だからこそ、何を評価し、どこを懸念しているのかを丁寧に言語化することが大切でした。評価軸の違いをなくすのではなく、それぞれが何を評価し、何を懸念しているのかを言葉にして共有することが重要だったと感じています。

- コロナ禍で対面の機会が限られる中、コミュニケーションはどのように工夫されたのでしょうか?

プロジェクトの途中でコロナ禍に入り、オンラインでの打ち合わせが中心になりました。

言葉だけで伝えられる内容であれば問題ありませんが、メカニズムの話になると、画面越しでは理解を共有しにくい場面もあります。

「ここがこう動くから、この形になる」と説明しても、実物を見ながら話す場合と同じようには伝わりません。異なる組織が連携するプロジェクトでは、同じ言葉を使っていても、受け取り方が違う場合もあります。

そこで、一度の打ち合わせですべてを理解してもらおうとせず、さまざまなツールも使いながら少しずつ認識を合わせていきました。

オンラインでの難しさはありましたが、話し合いを重ねながら乗り越えていきました。

3. 身近な技術が宇宙の課題を解く。SORA-Q開発で得た気づき

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自由な発想を、実際に宇宙で使えるロボットへ仕上げるには、いくつもの技術的な条件を乗り越える必要があります。

SORA-Qの小型化や軽量化は、どのように進められたのでしょうか。

- ものづくりの面で、特に苦労したのはどのような点でしょうか?

大きな課題の一つは、軽量化と強度を両立させることです。

機体を軽くする一方で、打ち上げ時の振動によって壊れない構造にしなければなりません。限られた大きさと重さの中で、必要な強度をどう確保するか。そこはかなり苦労したところです。

たとえば、SORA-Qの車輪は、一つの部品として作られています。

その理由は、複数の部品を組み合わせると、接合部に隙間が生じたり、強度が下がったりする可能性があるためです。ただ、一体の部品として作るには形状が非常に複雑で、簡単には加工できません。

そこで、実際に作れる形を探りながら、試作と改良を何度も重ねました。タカラトミーには、自社で素早く試作品を作り、必要に応じて作り直せるものづくりの力があります。そのスピード感に支えられた部分は大きかったと思います。

- おもちゃ業界と宇宙業界には共通する点はあったのでしょうか?

実際に取り組んでみて、想像以上に共通する部分があると気づきました。

おもちゃは、子どもが多少乱雑に扱っても壊れにくく、けがにつながらないように設計する必要があります。そのためには、構造を工夫し、できるだけ部品点数を減らしながら、十分な強度を持たせなければなりません。

宇宙機も考え方はよく似ています。

一度打ち上げた後は、簡単に修理できないため、高い信頼性が求められます。部品点数を抑え、振動や衝撃に耐えられる構造にするという点では、おもちゃづくりの技術と重なる部分が多くありました。

最初から共通点が見えていたわけではありません。実際に一緒に開発を進めたからこそ、それぞれの業界で培ってきた技術が、実は近い課題を解決していたのだと分かりました。異業種と組む面白さは、こうした予想していなかった接点が見つかるところにもあると思います。

- この取り組みを通じて、ご自身の考え方に変化はありましたか?

宇宙開発には特別な技術が必要で、技術的なハードルも非常に高いという意識がありました。そのため、過去の事例や実績をもとに、「この課題にはこの方法が適している」と考えがちだったんです。

ただ、今回のプロジェクトを通じて、普段身近に使われている技術の中にも、宇宙の課題を解く糸口があると実感しました。おもちゃの技術は、まさにその象徴です。

それ以来、これまでのやり方だけにとらわれず、もう少し視野を広げて、異なる分野の技術にも目を向けるようになりました。自分の中では、大きな意識の変化だったと思います。

4. 月面実証の先にある価値。JAXAが伝えたかったオープンイノベーションのプロセス

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異なる分野の知見をどう結び、組織や評価軸の違いを乗り越え、成果へつなげたのでしょうか。

応募の背景には、宇宙探査イノベーションハブの仕組みと、その中で積み重ねてきた連携のプロセス自体を評価してほしいという思いがありました。

- 日本オープンイノベーション大賞を知り、応募することになった経緯を教えてください。

きっかけは、プロジェクトメンバーがインターネットで賞を探す中で、日本オープンイノベーション大賞を見つけたことです。

SORA-Qが月面でデータを取得したことは、技術的な成果として非常に分かりやすいものでした。

しかし、技術的な成果だけではなく、宇宙探査イノベーションハブの枠組みの中で、異なる分野の企業や研究者が連携し、成果へつなげてきたプロセスにも大きな価値があると考えていたんです。

技術的な到達点を評価する賞はほかにもありますが、そこに至るまでの連携や工夫、オープンイノベーションのプロセスを評価する賞は多くありません。

私たちが伝えたいと考えていたことと、この賞の趣旨が合っていると感じ、応募しました。

- 応募にあたって、特にどのような点を評価してほしいと考えていたのでしょうか?

まず評価してほしかったのは、宇宙探査イノベーションハブという枠組みそのものです。

企業から研究提案を募り、JAXAが内容を評価したうえで、資金や人材、施設、技術的な知見を投入しながら研究開発を進めていくという仕組みが、今回の成果につながったと考えています。

もう一つは、異業種の連携をどのように進めてきたかという点です。

異なる組織が集まれば、評価軸や仕事の進め方も違います。実際に、うまく伝わらなかったことや、調整に苦労した場面もありました。

だからこそ、完成した技術だけでなく、どこで壁にぶつかり、それをどう乗り越えたのかまで含めて見ていただきたいと思っていました。

そうした過程まで共有できれば、これからオープンイノベーションに取り組む方々にとっても、参考になるのではないかと考えています。

5. 受賞がもたらした、組織の自信と次の連携

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オープンイノベーション大賞の受賞は、プロジェクトの成果を広く伝えるだけでなく、JAXAの組織内にも変化をもたらしました。宇宙探査イノベーションハブの取り組みはどのように受け止められ、その後の活動にどのような影響を与えたのでしょうか。

- 実際に受賞したことで、チームや組織内にはどのような変化がありましたか?

宇宙探査イノベーションハブが進めてきたオープンイノベーションの取り組みが、社会的に評価されたことは大きかったと思います。部署内でも非常に前向きに受け止められ、それぞれのメンバーにとって自信につながったのではないでしょうか。

技術を宇宙へ持っていき、実証することはもちろん重要ですが、それだけではなく、異業種と連携する仕組みや、成果に至るまでのプロセスについても評価していただけたと受け止めています。

そこに、今回の受賞の意味があったと感じています。

また、宇宙探査イノベーションハブの中でも、今回のプロジェクトを一つのロールモデルとして捉えられるようになりました。

取り組みの方向性が具体的な成果と社会的な評価につながった事例として、組織内で共有できるものになったと思います。

- 受賞によって、宇宙探査イノベーションハブの外部からの見られ方にも変化はありましたか?

定量的にどれほどの効果があったのかは、正確には測れていません。

ただ、宇宙探査イノベーションハブの体制や取り組みが社会的に評価されたことで、「この組織なら一緒に研究開発を進められそうだ」という信頼感にはつながったのではないかと感じています。

その結果として、研究提案を寄せてくださる方が増えたのではないかと感じます。

もう一つ大きかったのは、具体的なロールモデルを外に示せたことです。

おもちゃの技術が宇宙で使われるという組合せは、最初から誰もが思いつくものではありません。けれども、SORA-Qという事例が広く知られたことで、「自社が持つ技術も、実は宇宙分野に生かせるのではないか」と考えてもらうきっかけになりました。

JAXA自身も情報発信は行っていますが、受賞を通じて、より多くの方々に取組を知っていただき、自社の技術と宇宙との接点を考えてもらうきっかけになったと思います。

その意味でも、今回の受賞は大きかったと思います。

- 受賞をきっかけに、新しい共同研究や連携につながった例はありましたか?

受賞が直接どれほど影響したのかは分かりませんが、一緒にプロジェクトを進めたタカラトミーについては、その後、別の共同研究が始まったという話を聞いています。

共同研究を進められる相手として認知されたことで次の連携につながった可能性はあると思います。

SORA-Qの開発で、それぞれの技術力だけでなく、異なる組織と協力しながら研究を進められることは示せたのではないでしょうか。

6. 次の「意外な組み合わせ」へ。オープンイノベーションが広げる可能性

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SORA-Qプロジェクトを牽引した目標と、そこから見えてきた次のオープンイノベーションの可能性について伺いました。

- このプロジェクトを進めるうえで、チームが共有していた目標は何だったのでしょうか?

プロジェクトを始める段階から、目指す方向性を共有することは強く意識していました。

参加する組織がそれぞれ異なる目標を持ったままでは、チームとして一つの成果を目指すことが難しくなるからです。

「玩具開発で培われた小型化や変形の技術を生かして超小型のロボットを開発し、実際に月面で動かすこと」「それによって月面探査に貢献すること」が、大きな目標としてありました。

一方で、宇宙開発への貢献だけを目指していたわけではありません。それぞれの組織が、今回の成果を今後のビジネスやアウトリーチ、教育などにもつなげていくことなども含めたゴールを共有しながら、プロジェクトを進めていたと思います。

- 今回の経験を踏まえて、今後も新たなオープンイノベーションに取り組みたいと考えていますか?

今後も機会があれば、異なる分野の方々と連携するプロジェクトに挑戦したいと考えています。

特に面白いと感じるのは、これまであまり結びついてこなかった分野同士の組み合わせですね。

今回も、「宇宙ロボット」と「おもちゃ」という、一見すると離れているように見える技術が結びついたことで、JAXAだけでは思いつかなかった発想や成果が生まれました。

次に取り組む際にも、意外性のある組み合わせから、思いもしなかった成果が生まれることに可能性を感じます。

異なる視点が交わることで、想定していなかった成果につながるところが、オープンイノベーションの面白さだと思います。

- オープンイノベーションは、大企業だけでなく、地域や中小企業にも広がる可能性があると思いますか?

十分にあると思います。

日本オープンイノベーション大賞の授賞式では、地域の行政と高校生など、地域に根ざした取り組みも多く紹介されていました。

私自身、それまでは地域との連携を強く意識していなかったので、大企業同士の取り組みだけではないのだと気づかされました。

たとえば、地方自治体と中小企業といった組み合わせにも十分な可能性があると思います。むしろ、連携の可能性はさらに大きくなるのではないでしょうか。

オープンイノベーションには、組織の規模に関係なく、それぞれが持つ強みを結びつけられる面白さがあります。今後は、そうした地域発の取り組みにも広がっていけばよいと思います。

- 最後に、日本オープンイノベーション大賞への応募を検討している方へ、メッセージをお願いします。

この賞は、単に成果を表彰するだけのものではないと思っています。

応募に向けて自分たちの活動を整理することで、どこがうまくいったのか、どこに課題があったのかを振り返る機会になります。

応募を考えること自体に、まず一つの価値があるのではないでしょうか。

また、必ずしもすべての成果が出そろってから応募する必要はないと思います。

まだ取り組みの途中であっても、応募を通じて関係者に活動を知っていただけます。具体的な成果がまだ十分に出ていない段階であっても、応募してみてよいのではないかと思います。

まだ取り組みの途中であっても、応募を通じて関係者に活動を知っていただけます。具体的な成果がまだ十分に出ていない段階であっても、応募してみてよいのではないかと思います。

当時、私はまだ宇宙探査イノベーションハブに所属しておらず、JAXAの前任者が担当していました。

組織内のモチベーションにつながるだけでなく、外部に対しても、信頼性を示す一つの材料になるはずです。そうした点も含めて、ぜひ応募を検討していただければと思います。

当プロジェクトに参画した関係者の声

当プロジェクトに参加した株式会社タカラトミー、ソニーグループ株式会社、同志社大学より、受賞取組に貢献した技術のその後の展開などについてご紹介いただきました。

株式会社タカラトミー

受賞後もSORA-Qへの関心は継続しており、2026年6月10日には研究成果が米国の国際学術誌「Science Robotics」に掲載され、表紙にも採用されました。論文では、月面での新たな撮影画像や長時間稼働、姿勢回復動作の実証などが報告されました。

現在もプラネタリウムや科学館、scienceフェス、自治体主催のイベント、そして公開予定の映画「宇宙なんちゃら こてつくん」関連展示での活用など多様な活用・発信が継続しており、宇宙教育や科学啓発分野での展開が広がっています。

受賞を契機に、タカラトミーが培ってきた小型化・軽量化技術や変形機構が宇宙探査分野においても有効であることに加え、教育分野に貢献する事例としても認知が広がりました。

ソニーグループ株式会社

本プロジェクトを通じて、4者それぞれの強みや専門性を活かした取り組みから、多くの知見を得ることができたと考えております。今後は、こうした知見を踏まえ、将来的な応用の可能性について幅広く検討してまいります。

同志社大学

同志社大学では、SORA-Qが月面の軟弱なレゴリス上を安定して走行した原理を発展させ、より大型の月面ローバや月面建設機械にも適用可能な新しい走行技術の研究を進めています。

現在、JAXAおよび民間企業3社との共同研究を通じて、特殊形状車輪や走行制御技術、レゴリスとの相互作用解析などの研究開発を進めており、将来の月面探査や月面インフラ構築への貢献を目指しています。

過去受賞者 長編インタビュー
「おもちゃの技術を宇宙へ。JAXA が SORA-Q を通じて示したオープンイノベーションの価値」

令和6年度 第7回 内閣総理大臣賞受賞

産学官連携による日本初・世界最小の月面ロボットSORA-Qの開発

代表組織 :国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙探査イノベーションハブ

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